アニカレ広場
Home > > > 声優 立花慎之介さん TALK LIVE!!

声優 立花慎之介さん TALK LIVE!!

2020/08/22

 

2020年7月25日のオープンキャンパスにて、「アイドリッシュセブン Second BEAT!」千役、「文豪とアルケミスト 〜審判ノ歯車〜」島崎藤村役、「number24」由布郁斗役、「ハイキュー!!」夜久衛輔役、「神様はじめました◎」巴衛役などでご活躍中の立花慎之介さんのトークショーを開催しました!

 


 

 

司会:午前中に在校生向け特別授業を実施していただきましたが、在校生の印象はいかがでしたか。

立花慎之介さん(以下、立花):すごく真面目に聞いてくれていました。また、事前にいただいていた質問内容が結構現実的でした。きちんと授業を受けていろいろと考えているんだなというのを肌で感じました。

 

司会:コロナ禍の中、アニメーション制作や収録の現場ではどのように復帰といいますか…進んできていますか?

立花:僕らは、小さなスタジオに役者がたくさん集まって収録をしています。テレビ業界だともっと大きいスタジオを使っていて、スペースも広いところで収録ができますが、僕らの使う音声だけのスタジオというのは本当に小さいです。スタジオの仕様上、密になることは避けられないので、その辺りはスタッフさんがいろいろ考えてくださっています。6月頭くらいからは、2、3人の小さなグループを作り、時間を割り振って収録をしています。今まではだいたい5時間くらいかけて30分の番組を収録していましたが、その時間を「立花さんのグループは10時から10時15分までです」、「10時20分からは次のグループが入ってください」というようにローテーションを組んでいます。みなさんもご存知かもしれませんが、今までであればマイク1本を複数の声優さんが入れ代わり立ち代わりで使用していましたが、それはもうやれません。今は1人1本のマイクを使用し、終わったらスタジオのスタッフさんが消毒をしてくれています。感染者が出ないように感染予防は徹底されていますね。イベントとなると、多くのお客さんやスタッフが関わるのでなかなか開催できないところではありますが、それ以外はほぼ通常通り、8割くらいは仕事として戻ってきているのではないでしょうか。イベントの方も、配信に振り替えられるものは振り替えて実施しているものもありますね。そうやってだいぶ戻ってきてよかったな、というのが我々声優業界の仕事の現状ですかね。

 

司会:実際出演された作品についてお伺いします。まずはアイドリッシュセブンから。千(ゆき)という役を演じるにあたって、こだわっているポイントはありますか?

立花:まず、アイドリッシュセブンの作品のすごいところは制作陣の作品に対する愛が強いということ。こういった続きものを演じていく、しかもアニメーションと違ってゲームの収録は半年~1年に1回になります。新人の頃で、アイナナしかやっていなければキャラに愛着があっていろいろと覚えているということもありますが、仕事をたくさんしていくようになると、アイドリッシュセブンの千という役も仕事のうちの一つという形にせざるを得なくなるんですよね。キャラは覚えているけれども半年前の細かい修正は忘れていることもあります。だから現場で前回録った音声を聞いて「今のシーンの1つ前はこんな感じだったので、この感じのテイストと心情で続けてください」というやりとりをします。作品によってはキャラが成長したということで振れ幅があってもOKが出たりしますが、アイナナに関してはかなり厳しくて(笑)。特に千は感情をあまり表に出さない、内側に込めるタイプの役ですが、別の仕事で感情表現豊かな人を続けてやっていると、千も若干感情表現が豊かになることもあります。そうするとテストのとき「そんなに感情出さないでください」、「もっとクールにやってください」という指示が結構細かく出ます。それはやはり制作サイドが作品やキャラをちゃんと理解して修正してくれる姿勢ができているということ。僕らがスタジオで聞く自分の声と、スタッフさんが聞く僕らの声とは若干の違いがあって、それをちゃんと指摘してくれる部分が素晴らしい作品だなと思える部分でもあります。そういったことがあるので、千というキャラクターで、抑えるところはきちんと抑えつつどうやって感情表現していこうかな、という部分が難しいですが非常にやりがいのあるキャラクターだなと思っています。

 

司会:制作されているみなさんも、他の作品の制作にも関わっているのでしょうか?

立花:プロデューサーといった人たちは、多分アイナナだけだと思います。特にアイナナくらい大きなコンテンツになってしまうと、アニメーションとかライブとかをやっているだけじゃありません。商品のコラボレーション等の展開があるので、そっちも全部監修していきつつ…ですね。本当だったら今年もいろいろ動きがある予定でしたが、コロナの影響で予定していたスケジュールが組めない。それを組み直すと、宣伝とかアニメーションも止まってしまうので、それをどうやって進めていこうといったことを日々考えています。そういうのを含めてアイナナ愛の強い人達が多い作品なので、僕も中途半端な覚悟でやれる作品ではありません。応えられることには応えていかなきゃいけない作品のひとつです。

 

 

司会:歌の面ではいかがでしょうか?立花さんご自身、もともと歌うこと自体は好きな方だったんですか?

立花:僕は決して歌がうまいと思っていません。音程をとるのが苦手なので、そこに気をつけながらレコーディングやライブをしています。アイナナだと振り付けがあるので 、それをやりつつ歌をどうやって魅せるのかを考えますね。アイナナの声優さんたちの中でも僕と保志さんは年長グループで、年長グループだからこそ頑張らなきゃいけない部分というのが、歌でも踊りでも出てきます。千と百はあの世界の中でもトップグループなので、それも含めて他のメンバーたちよりも頑張るべきところはいろいろあります。メットライフドームという4万人を超すお客さんの前で踊れる機会は声優業界でもほとんどないので、それを体験できたのは非常に嬉しいことだったと思いますね。ステージは、お客さんの顔が見えないので、全く緊張しませんね(笑)。逆に今日のステージのほうがお客さんの顔が見えるので緊張します。僕は、ああいったステージに立つと気持ちよくなっちゃうタイプで、嬉しくて最高だなーって思ってやっていると、歌詞を飛ばしたりとか踊りを忘れたりとかします(笑)。

 

司会:特にこだわっている点や気をつけている点はありますか?

立花:僕は、他の方より1~2ヶ月先にリハーサルを始めて、無意識でも歌って踊れる状態にしています。若い子たちに比べてものを覚える時間は僕らの方がかかると思っていますし、振りや歌がとんだりすることもある。あと、歌って踊っていると酸欠になってきますが、その状態でも踊り続けないといけないんです。 本番では、歌を覚えて振り付けやフォーメーションも覚えて、それをやりながらお客さんに対してファンサービスもする…と、同時にいろんなことをやらなきゃいけないんです。それらを同時に頭で処理をするんですけど、「なにか忘れてないかな?」と考えたり、ファンサービスしているけど顔が笑っていないとか、そういうことになるのが嫌なんです。だからできるだけ歌と踊りは無意識にやれる状態にして、他のことに集中したいと思っています。僕も含めてみんな、作品がDVDになることも考えているので、どこにカメラがあるのかをだいたい覚えます。あそこのカメラの赤いランプがついているから、あれに向けて手をふろうかな、ということも考えながらやるんです。脳内で処理することがすごく多いので、終わってから「あれやれなかったな…」と後悔したくないので、少しでも当日の脳の負担を減らすために、事前にやれることをやっています。

 

司会:高校生の頃にやっておくといいよというアドバイスがあればお伺いしたいです。

立花:言うのは簡単ですけど…僕が一番重要かなと思うのは「今何が必要なのかを考える」ことです。学校って知らないことや分からないことって先生に聞けば教えてくれますよね。これが小中高と続いてくると「分からないことは聞けば教えてくれる」「教えてもらえるもの」だと思うようになってしまいます。だけど、大人の世界、特に僕らのような業界に入ると、新人で現場に出ると誰も何も教えてくれないです。そのときに必要なのは「じゃあ自分は何をするべきなのか」と考えられるかどうか。この考える力というのは、教えてくれるという環境下にいるとだんだん欠如してきます。例えば、雑誌やテレビに若手の声優さんが出ているのを見つけたとき、自分とは何が違うんだろう、自分には何が足りないんだろう、と比較して足りないことをやってみる。明らかに演技力が足りないと思ったら、その演技力を学ぶためにはどうしたらいいんだろう?と考える、先生に「どうしたらいいですか?」と聞いてみる、演技力を学ぶために何をすべきなんだろう?と、一つずつ考えていくと答えが見えてきます。だから、答えをもらうよりまずは自分で考えてみるということを今から身につけておくと、後々非常に役立つと思います。僕が声優を目指し始めたのは高校1年生のときだったんですけど、高校卒業しないと専門学校や養成所には入れない。なので、高校卒業するまでの間、勉強もやりつつ声優のことで勉強できることはないかな?と考えました。今は雑誌とかインターネットで声優がどういうことをしているのかといった情報が一目瞭然でわかりやすかったりするんだけど、20年くらい前なので、当時は今みたいにインターネットも雑誌もなかったから、調べようにも本くらいしか方法がなくて。その中で見つけたことが、役者として舞台で動けるような身体を作ることがひとつ。他には演技力、滑舌などいくつかありましたが、身体作りはできると思い、3年間自分でストレッチをやっていました。僕は、お芝居の勉強は専門学校や養成所に入ってからやろうと思っていたので、あえて放送部とか演劇部には入りませんでした。真っ白な状態で入りたかったし、そもそも素人の付け焼き刃でプロに勝てるわけがないと思っていましたし。だけどみんなと一緒にスタートラインを切るのは嫌でした。みんなより一歩前に進んでいたかったので、専門学校に入ったときに何がみんなより勝っていられるのか?と考えたときに、滑舌なら勝てるだろうと。滑舌は毎日繰り返すことが重要だと聞いていたので、声優を目指そうと思ったときから、ストレッチをしつつ毎日朝と晩に外郎売を必ずやる、ということを高校卒業まで続けていました。当時、目指し始めてちょっとしたときに、声優グランプリ第一号が出たんです。それまで声優さんを扱う雑誌ってなくて…声優さんを扱う雑誌が出始めたときに、神谷明さんが本を出したんです。当時、声優さんが本を出すなんてほとんどなかったので、試しに買ってみました。声優を目指すためにはどうしたらいいという流れの説明のなかで、外郎売が全部載っていました。それをみて「これだったら自分でも分かるしルビもふってあるしやれるな」と思い、やり続けました。これも、自分で考えた結果「それをやろう」と思ったわけで…これを人から「やれ」と言われたら多分続かなかっただろうな。みんなが好きで目指すこと、やりたいことだから、自分で考えたら続くと思いますよ。

 

 

司会:「ハイキュー!!」のようなスポーツ系の作品の役で注意していることはありますか?

立花:今このコロナ禍においてスポーツものって地獄で(笑)。特に「ハイキュー!!」なんか30~40人くらいキャストが出てきますけど、一堂に会せないんです。「ハイキュー!!」に関しては、通常5時間で終わるところが今は丸1日かかっていますね。それだけの人数を2人ずつとかに分けながらやっているので、僕らは早く帰れますがスタッフさんは何十回この映像を見るんだ、って状態ですよね。スポーツものは人がたくさん出てくるので大変ですけど、「ハイキュー!!」は、これまたスタッフさんの愛が強い作品です。「ハイキュー!!」って絵を見てもらったら分かるんですけど、非常にキャラが細かく動くんですよね。その絵に負けないようにお芝居しなきゃいけないと思っています。収録でも「今録っている場面の心情をもうちょっと強く出してください」とか、「練習中なんだけど気を抜いてる感じでお願いします」とか、そういう細かい「感情の裏側」を演じてくださいと言われることが多いです。そんな中で印象的に残っているのが、バレーなので攻撃する側と守備側に分かれるんですが、サーブを打つ、レシーブを打つ、トスをする、アタックをするという流れをしたときに、サーブを打っている側は攻める息にしてください、レシーブをするときは受ける息にしてください、受けてトスをするときは普通でもいいんですけど、アタックをするときも体制が崩れたアタックなのか、きっちり全力で打てているのか、それを息だけで表す。そういう言葉じゃない部分に力を入れています。「ハイキュー!!」は、チームごとに個性が強いキャラクターたちが集まっているので、キャラクターを維持しつつどうやって試合に臨むのか。あとは成長する物語でもあるので、どうやってキャラクターの成長を表現するのかが面白いところかな。「ハイキュー!!」のすごいところは、アフレコするときには絵が結構できあがってくるところです。今は色が入っていないのが当たり前の中、線画で絵が動く過程が見えたりして、非常にアフレコがしやすいですね。どうしても予算の都合上、1クールの作品だと10話以降になると「こいつ誰なんだろう?」っていう…キャラクターの名前しか書いていないような絵の状況でアフレコしなきゃいけないこととかもあるんですけど、「ハイキュー!!」やアイナナはそれがないですね。制作陣が時間に余裕を持って作っているということだと思いますけど。とてもお芝居がしやすくてありがたいです。

 

司会:チームワークが必要になってくると思いますが、仕事をしていると自然と息は合ってくるのでしょうか?

立花:それは経験と技術ですね。声を合わせて応援するとか、声を合わせて「よっしゃ!」と言うシーンがあった場合、現場をたくさん経験してきている声優さんは、パッと合わせるときでも横にいる人たちの空気をちゃんと読みます。なので「合わせよう」という意識がある。誰かが息を吸ったらそれに合わせてちゃんと声が出るんですね。新人や若手の場合は周りを気遣う余裕がないので、合わせなきゃいけないところで合わせられない、一人だけ先に出ちゃうとか一人だけ遅れちゃうとかがありますね。経験の差でその辺がやりにくそうだなと思うところはありますが、だんだん収録を重ねていくと、若手や新人の方たちも理屈が分かってきたり、横を気にしたりするようになっていきます。あれは職人芸ですね。

 

 

司会:小説も執筆されていらっしゃいますが、もともと文章を書くのはお好きだったのですか?

立花:僕、結構ゲーマーで昔からゲームはたくさんするんですけど、中学校くらいのときに当時アクションゲームとかシューティングゲームとかがたくさんある中で、「弟切草」や「かまいたちの夜」などのサウンドノベルというゲームがありました。その「かまいたちの夜」が大好きで、初めてミステリーというものに深く触れたのが「かまいたちの夜」でした。当時はパソコンがなかったので、父親のワープロを借りて「かまいたちの夜」の続編とか、違う分岐の話を書いていましたね。そのときに、文章書くのっておもしろいな、ミステリーっておもしろいな、自分の小説書きたいな、という思いはありました。

 

司会:今も執筆活動や漫画の原作を担当されていますけど、声優のお仕事に活きてくることはありますか?

立花:声優さんは本をたくさん読めとか言われます。学校に入ると、台本をもっと読めと言われることも出てきます。僕もそうでしたが「台本を読め」と言われても分からないんですよ。台本を読んできて演じて、先生に「お前なってないからもう1回台本読んでこい」と言われても「家で読んでるっちゅーねん」って話ですよね。僕もそうだったし、絶対みんな感じると思いますが、先生の言っている「本を読め」という意味が理解できなかった。読めとは言われるけど、読み方を詳しく教わるわけではない。だから言われても分からないんですよね。僕が、台本を読むということをちゃんと理解できたのは、自分でラジオドラマを作ったときです。5~10分くらいのラジオドラマを毎週書いていた時期があり、そこで台本を書くということをやってみて、初めて「台本にはこういう意味が込められているんだ」「書き手はこのセリフでこういうことを言いたかったんだな」というのが分かるようになりました。自分で文章を書くと、「この文章をこの2人でやりとりするのは、こういうことを言いたいから。じゃあこういう流れにしようかな」と考えながら書きます。それが分かってくると違う台本をパッと読んだときでも、「なるほど。ここにこういうやりとりがあるってことは、原作者はこういうことが言いたいんだろうな」というのが想像できるようになります。それが分かると「じゃあ最後は怒鳴って怒ったほうがいいんだろうな」という感じに台本を理解できるようになります。そうやって、相手側の立場にたって考えることは、経験してよかったと感じています。最近は、音響監督をやってみるのもいいのかな、と思っています。僕らの職業って、声優さんがいて制作スタッフ陣、クライアントさんがいるんですけど、収録現場には音響監督さんという立場の人がいます。音響監督の本当の仕事は、BGMやSEなどの曲を入れることですが、それに加えてクライアントさんが望む演技を役者に伝える作業、架け橋みたいな仕事をするのが音響監督の仕事でもありますし、キャスティングをする場合もあります。こういった制作側に立つことによって、オーディションでどういう人が必要なのか、制作スタッフ陣が何を望んでいるのかなどが見えてきます。だから、声優になりたいから声優を目指すのももちろんいいですが、声優に必要なものをそうやって外から見てみるのもいいと思います。これはどの仕事を目指す人でも当てはまると思います。いろんなことに興味をもって、少しだけでもいいのでかじってみるのは非常にいいと思います。

 

司会:最後にみなさんにメッセージをお願いします。

立花:今、こういうコロナで非常事態の状況って、今後の教科書に載るレベルの事態だと僕は思っています。世界中で不安な要素が広まっている時期ですが、みなさんが興味を持ってくれている声優業界、アニメーション業界というのは、その中でも今後必要になってくるエンタテインメント業界だと僕は思っています。今は必要ないかもしれないけど、これからコロナが落ち着いていけば絶対必要な職業です。多分みなさんがプロになる頃にはコロナも一段落していると思いますから、みなさんの力が必要になってきます。今は確かに不安な要素もありますし、正直僕ら大人も不安ですが、BLACK SHIPの養成所や学校などではいろいろ対策を練りつつ、どうやったらみなさんに授業を提供できるのかを必死に考えながらやっています。不安要素をみんなで取り除きつつ、今後のエンタテインメント業界を盛り上げることを目指してぜひ頑張っていただきたいなと思います。まだもうちょっと先になるとは思いますが、僕も現役で頑張りつつみなさんとスタジオで会えることを楽しみに待っていますので、そこを目指してこれからも頑張っていただけると、僕も嬉しいなと思っています。今日は1日ありがとうございました!

 

アニカレのことを
もっと詳しく知ろう!

オープンキャンパス 資料請求